院長のひとりごと
 第2回 激やせの子犬をみて思うこと 2010.03.22

 時々激やせの子犬を診察することがあります。こういった激やせの子犬は、ほとんどの場合とても元気で、食欲もものすごく旺盛です。ではなんで動物病院にきたのでしょうか?具合がわるいから心配で病院にきたのではなく、ほとんどの場合ワクチンを打ちに来たり、健康診断で来院していることが多いように思います。

 こういった激やせの子犬たちは、健康診断をしたり検便をしたりしてもまったく異常がありません。ではなんでそんなにやせていると思いますか?答えは簡単です。食事を十分に与えてもらってないだけなのです。こういった場合の飼い主さん達はきまってものすごく子犬をかわいがっていますし、一生懸命育てています。それこそ毎日日記までつけている人がいるくらいです。それではなぜ?

 ほとんどの場合、子犬を買ってきたときのショップや、ブリーダーさんから言われた食事の与え方を正確に、かたくなに守っているためにこうなるのです。すべてのショップやブリーダーさんがそうだと言うわけではありませんが、どうも一部のペットショップやブリーダーさん達が指導する食事の量と回数が少ないようです。

 たいていは「1日12粒ずつをお湯でふやかして、1日2回あげてください。そして毎日1粒ずつ増やしてください。」という感じが多いと思います。この12粒が多いかどうか私にはわかりません。ただ回数は少ないと思います。成犬ならば1日2回、あるいは1回でもいいでしょうが、子犬だったら、胃袋などの消化器系がまだ十分発達していないため、一度に沢山食べられません。それに生きるだけでなく成長する分を食べなければならないので、1日3〜4回くらいは食事を与えていいはずです。

 意図的に食事の量や回数を少なくしている場合は、次のような理由があると聞いたことがあります。ホントかどうか、真意のほどはわかりませんが。

1. みんな、どうせ飼うなら子犬から飼いたい。だからペットショップで陳列している犬は大きくなっては困る。それは月齢が進んでも小さければ子犬にみえる。そのためにあまり食事を与えないようにしている。

2. 食事をたくさんあげるとお腹を壊して下痢することがあるので、なるべく食事は少なく与えていた方がトラブルが少ない。

3. 食事をたくさんあげると、うんちをたくさんするので、部屋がよごれて犬が臭くなるので洗うのが大変。だから食事や水はあまり与えない。

4. 食事を少なく与えることで、小さな犬、カニヘンダックスや豆柴をつくれるのではと思い違いしている。

 こんな理由をみて、みなさんどう思いますか。昔からこんな感じの食事の与え方を行っているショップは実際あります。以前開業して間もない頃、あるショップに飼い主さんに対しての食事の指導方法を改めるように電話したこともありますが、一切聞き入れてくれませんでした。
 自分たちはずっと犬を飼育し、長年の経験でやってきたことだから、私のような開業して間もない若造の獣医師のいうことなど聞く気はない。自分の行っているやり方が正しいといって電話を切られました。

 こういったショップの経営者から、食事の与え方を指示されたスタッフは、疑問に思っても従うしかありません。そしてこのことをそのまま購入した飼い主さんに伝えてしまいます。真面目な人はその言い伝えをしっかりと守り、子犬は栄養失調になっていくのです。小型犬ならそれほど大きくならないので、それほど大きな問題になりませんが、中型以上の犬だと栄養失調になります。栄養失調で死んだ子犬も何頭かみたことがあります。病院に来たときにはすでに手遅れでした。

 では実際にはどのように食事を与えたらいいのでしょうか。
私は飼い主さんに次のように指導しています。
子犬の食事は最低でも1日3回、そしてその量は子犬の食べ方をみて決めてもらいます。
どういうことかというと、食事を一気に脇目もふらずに食べて、さらに食器を舐めているようなら足りないと判断し、次の食事の量を少し(何粒でもいいけど、感覚的に2割ましとかでいいと思う)増やして、また食事の食べ方をみて、同じならまた次の食事で増やします。
限度がないわけではないので、ある程度増やしていったら一気に食べなくなることがあると思います。
食べるのを途中で休んで遊び出したり、食器からちょっとはなれたりしたらここで食事を終わりにしてもらい、食器をさげてもらいます。
一回の食事量は一息で食べる量を与えてもらうということです。当然大きくなってきますので、また足りなくなればまた増やせばいいわけです。

 大きくなってくると、今度は同じ量でも残すようになってきます。そうなったら真ん中の食事をやめて、1日2回にしてもらいます。
 ある程度まで成長すると成長分の食事はいらなくなるので、食事の量が増えなくなる、あるいは減ってきます。この時、食事に飽きたと勘違いしさらにおいしそうな食事を買ってきて与えれば、また喜んで食べてくれます。でもこれを続けると贅沢な、そして肥満の犬になってしまいます。豪華でおいしいドッグフードの味を覚えた犬は、もとの食事にはなかなか戻れません。食事に飽きたのではなくて、もうそんなにいらないから食べないだけと理解してください。

 子犬のうちはある程度好きなだけ食べても肥満になることはありません。「僕は中学、高校の時、食べても食べてもガリガリでしたが、今はあの頃の3分の1くらいしか食べないのに、こんなに太っているんです。」と飼い主さんに言うと納得してもらえます。そう、私はもう育ちきったわけですから、余分三兄弟とどう折り合いをつけるか悩む日々です。なかには「うちの○○ちゃん、好き嫌いが多くて、あまり食事を食べてくれないんです。」という割には太っている犬がいます。そういうことです。贅沢三昧になっているだけです。

 食事の与え方やしつけの仕方など、犬の育て方に関する書籍やネットでの情報が今沢山あります。
本に書いてあるようなことは、多くの人の目に触れますから大きな間違いはないと思います。ほとんどのペットショップ、ブリーダーさんはきちんと指導はしてくれますが、一部には犬に対しての科学的知識をもたずに、ただ適当な経験と勘でもの言う人もいるということを分かっていて欲しいのです。 

 日本のペット業界において、ペット販売業、ブリーダー、トリマー、訓練士などいろんな職種がありますが、これらはすべて資格免許ではありません。所属する協会が認定書を発行しているに過ぎないのです。つまり、動物取り扱い業者の届け出は必要ですが、だれでもなんの資格がなくても犬の販売をしてもいいし、犬の繁殖をしても、犬の毛をカットしても、犬のしつけを引き受けてお金をもらっても構わないのです。たぶんまもなく、動物の看護師は、資格試験が実施され免許が必要になると思われますが、現在ペット業界において動物に対しての国が認めている資格免許は、獣医師しかないということを知っていて欲しいのです。

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第1回 猫の抜爪手術について 〜院長の考え〜
                 
 猫は爪研ぎをするのが当たり前ですが、この当たり前の行為で猫を処分しようとする飼い主さんは結構いるのです。
以前、山形県の動物指導センター(いわゆる犬管理センター)の職員から電話がかかってきたことがあります。それは猫を処分しに来た人が、ずっと泣いているのでその訳を尋ねたら、家を新築したそうで、そうしたら猫があいかわらず爪研ぎをするので、おじいちゃんに猫を処分するようにいわれてきたとのことでした。
その職員は猫の抜爪手術(爪が生えてこないように切除する手術)のことを知っていて、うちでやっているかどうか電話をかけてくれたのでした。その猫は九死に一生を得てうちで無事に抜爪手術をうけて、めでたく家に帰ることができたのでした。

 実は、院長である自分が飼っている猫はすべて爪をとってあります。
なんとなく動物を虐待しているイメージがあるのではないかと思って、あまり宣伝もしてませせん。
そのせいか、抜爪手術があることをしらない猫の飼い主さんが意外と多いのです。
そこで今回は自分の病院のHPがあるのでみなさんに紹介しようと思いました。

 実際、自分のうちの猫は避妊手術、あるいは去勢手術を少し早めに行い、この時に同時に抜爪手術を実施してます。術後は少し出血することがあるので、2泊入院させてます。手術は爪の生えてくるところから切断し、電気メスで止血します。爪研ぎで問題になるのは前の手だけですから、後ろ足の爪はとってません。手術をすれば当然もう爪は生えてきませんから、爪研ぎをしたり、同居の犬や小さい子供にじゃれての傷つけることはありません。おもしろいことに爪がなくてもちゃんと爪研ぎの動作はしますが、爪がないのでどこにも傷はつかないので安心です。

 自分がなぜ積極的に爪をとる手術をするのかというと、私が以前勤務していた東京の動物病院の院長は猫好きでしたが、やはり全ての猫の前手の爪を取ってありました。
外にださないで飼っていれば、爪がなくても猫たちは何も困らないとのことでした。猫によっては市販の猫の爪研ぎでしかやらない猫もいますが、そうでない猫はソファーや柱あるいはカーテンなどあちこちで爪研ぎをします。そうすると、その猫にはいつも怒ってなければいけないのでそれがかわいそうだからとも言っておりました。そしてそこの猫たちはまったく可哀想ではなく、爪がなくてもいたって元気でじゃれて遊んでいるのでした。

 うちの猫達も爪がなくても、元気に走り回ってます。時々外に脱走するときもありますが、病院で飼っていた猫で今年の夏に老衰で亡くなったカヨという猫も爪をとってありました。うちの病院にきたことがある方なら待合室の受付のカウンターで寝ている猫をみたことがあるかもしれません。この猫も比較的病院内で自由にさせてあげれたのは爪をとってあったからです。病院内にはいろんなものがあるので、それにあたり構わず爪を立てられたのではたまったものではありません。このカヨも時々裏口から病院の外に脱走することがあったのですが、なかなかのハンターで時々スズメを捕まえてくることがありました。爪がないのにいったいどうやってスズメを捕まえてくるのか、うちのスタッフみんなで不思議に思ってました。ずいぶんどんくさいスズメもいるもんだと。
 いろいろ書きましたが、抜爪手術を行った猫たちをみてきて、自分としては抜爪手術は決して猫の虐待になるとは思っていません。爪がないことで猫たちは本来の行動が制限されることになるとは思いますが、ずっとわれわれ人間と一緒に暮らしていく伴侶動物である以上は、避妊や去勢手術を行うこととなんら変わりはないと考えています。みなさんはどう思いますか?